はじめに:AIの答えは正しい。でも納得できない。
AI(人工知能)は大量のデータをもとに、「これが最も効率的です」という形で答えを導き出します。
膨大な情報を高速で分析し、人間だけでは到底追いつけないスピードでパターンを見つけ、将来を予測する技術です。
それでも、私たちはその答えを見たときに、素直に「そうだ」と思えないことがあります。
「理屈では正しいのに、なぜかモヤモヤする」──そんな経験はありませんか?
FPの現場でも、この現象はよく見られます。
AIが計算した“最適なプラン”が、必ずしもその人の「幸せ」につながらないと感じる場面があるのです。
では、なぜそのようなギャップが生まれるのでしょうか。
AIの得意分野 ― 「正しさ」と「効率」
AIは、論理と計算がとても得意です。
人間では処理しきれない量の情報を分析し、
- 「こうすれば損しにくい」
- 「こうすれば利益が出やすい」
という形で、合理的な答えを提示してくれます。
たとえば、資産運用の世界では、AIが作るポートフォリオ(投資の組み合わせ)はとても合理的です。
ロボアドバイザーや投資AIの多くは、「リスクを抑えながらリターンを狙う」という考え方で設計されています。
でも、AIが扱っているのは“入力された数字だけです。
将来の目標額、投資期間、リスク許容度──
こうした数値をもとに計算しているだけで、その人の背景や性格、思いまで理解しているわけではありません。
たとえば…
- 「家族との時間を大切にしたい」
- 「趣味を楽しむ余裕も残したい」
- 「数字よりも安心感を優先したい」
こうした気持ちや価値観までは、まだAIだけでは完全に読み取れません。
だから、AIの答えは正しいのに、気持ちがついていかないことがあるのです。
人が求めているのは「正解」ではなく「納得」
私たちは、ただ理屈が通っている答えだけで安心できるわけではありません。
本当に心が動くのは、「自分の気持ちと、選んだ理由がつながった瞬間」です。
行動経済学や行動ファイナンスの分野でも、人間の判断には感情や思い込み(バイアス)が強く影響することが示されています。
たとえば、
- 「老後資金をしっかり準備したい」と思っている
- でも「子どもの教育にお金をかけたい」という気持ちもある
──こうした迷いは、ごく自然なことです。
AIなら、家計の数字だけを見て「教育費を削りましょう」
と言うかもしれません。
でも人間にとっては、
「子どもが笑顔で学ぶ姿を見る時間」
そのものが幸せだったりします。
数字だけでは語れない想いや価値観があるからこそ、理屈だけの答えは、どんなに完璧でも「何かが足りない」と感じてしまうのです。
FPとして感じた「AIでは補いきれない部分」
私自身、FPとして感じてきたのは、
お金の判断は数字だけではできないという現実です。
FPの仕事は「財産を増やす方法を教えること」だけではありません。
その人の人生を一緒に考え、
- 何を大切にしたいのか
- どんな未来を思い描いているのか
- 何を守りたいと感じているのか
それを丁寧にすくい上げることが、とても大切な役割です。
あるお客様は、AIが推奨した節約プランに沿って、徹底的に支出を削りました。
家計は確かに改善しました。
AIのロジックでは「外食=不要な支出」かもしれません。
でも、そのご家庭にとっては、“外食で笑い合う時間”が、心のゆとりだった。
その価値は、数字では測れません。
だからこそ、人間が寄り添いながら選択を支える必要があるのだと感じています。

AIと人間は「競争」ではなく「役割分担」できる
では、AIの存在が不要なのかと言うと、そうではありません。
むしろ、AIの力をうまく使うことは、これからますます大切になります。
AIの強みは、
- 正確さ
- スピード
- 大量の情報処理
こういった、人間には難しい部分です。
資産運用の計算やリスク分析など、数字が中心になる作業はAIの方が得意です。
計算ミスや思い込みもなく、いつでも公平な判断をしてくれます。
実際のサービスでも、「AIの分析 + 人間のアドバイス」
という形が主流になりつつあります。
大切なのは、
最後の判断者は人間であること。
AIが出したデータや提案を見ながら、
- 「これは自分の価値観に合っている?」
- 「このプランで私は気持ちよく暮らせる?」
- 「生活は無理なく続けられそう?」
と、自分自身に問いかけることが必要です。
私はこう考えています。AIは“安心の土台”を作り、人間の価値観が“最終的な方向”を決める。
AIと人間は、どちらが上かではなく、
お互いの弱点を補い合うことで、より良い答えに近づける存在なのです。
「納得できる答え」は数字だけでは生まれない
AIが示すのは「正解」かもしれません。
でも、人間が求めているのは“正しい答え”よりも、“自分で選んだと思える答え”です。
たとえ少し効率が悪かったとしても、
自分で選んだ答えのほうが、納得感があり、後悔しにくいものです。
そして、その選択には必ずストーリーがあります。
- 家族の笑顔を守りたい
- 人生にゆとりや遊び心を残したい
- 不安ではなく希望を持って暮らしたい
そうした気持ちを抱えながら選んだ答えは、
ただの数字の組み合わせとは、まったく別物です。
まとめ:AIには「正解」があり、人には「意味」がある
AIの答えに納得できないのは、私たちが「感情」で生きているからです。
AIは効率や合理性を追求します。一方で、人間が求めているのは「私はこれでいいと思える答え」です。
どれだけ完璧な数字の計算が示されても、そこに自分らしさや大切な人との時間、心からの幸せが感じられなければ、納得にはつながりません。
これまで多くの方と向き合って感じたのは、最も幸せにつながるのは “納得して選んだ道” であること。というシンプルな事実でした。
遠回りに思える選択でも、
「自分の価値観に合っている」と思える方を選んだ人は、
後から振り返ったときに、「これでよかった」と、穏やかに言えるのです。
AIが進化しても、“最後に決めるのは私たち人間”
これからの時代、AIは私たちの暮らしをどんどん支えてくれるでしょう。
資産運用、仕事、学び、健康管理……それはきっと心強いことです。
でも、“最後の一歩” を踏み出すのは、AIではなく、いつだって人間です。
数字では語れない思いや価値観、人生の背景、家族の笑顔、そこには物語があります。だからこそ、AIと共に歩むこれからの時代でも、「心で決める力」は、ずっと大切なまま残り続けるはずです。
最後に
AIは“答え”をくれます。
でも、自分の人生を選ぶ“理由”を作るのは私たちです。
そしてその理由が、自分にとって確かなものだと思えたとき──人は安心し、前に進めます。
その「納得」を大切にしながら、AIと共に、これからの未来を歩いていきたいですね。

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